新発田で農業を継承していく

ページ番号1008899  更新日 平成30年3月29日

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生まれ育った地域の農業を次の世代へつなげていきたい

写真:大倉 翼さん

農業法人でコメ栽培などに取り組む大倉 翼(おおくらつばさ)さん

 新発田市を代表する産業と言えば、ふるさとの豊かなる大地が育む「農業」が挙げられます。全国的に後継者不足が問題となっている農業。地元を離れて学生生活を送る中で、ふるさとを顧みた時に自分が恵まれた環境で育ったことを実感し、「新発田で農業を継承していく」という選択をした方がいます。
 自らの職業として農業を選んだ経緯や、培った農業に対する知識や経験を次に継承していくという農業者としての思いを伺いました。

家業である農業を受け継ぐという選択

写真:大倉さんが育てた収穫間近の稲穂

 豊浦地区の稲作農家で生まれ育った大倉さん。もともと家業を継ぐことを決めていたわけでなく、農業はさまざまな職業の選択肢の1つにすぎなかったそうです。最終的に、自らの職業を「農業」と決めた理由や、仕事に対する思いを伺いました。

 私は農家の長男として育ちましたが、親から「農家を継いでほしい」と言われたことは一度もありません。むしろ、私のことを考え、「自分のやりたいことをやれ」と言ってくれていました。しかし、私自身、頭のどこかに農家の長男という意識があったのか、自然と農業大学に進学する道を選択していました。
 通った大学は北海道にあり、そこで見てきた農業は、規模も違い、海外の農業を見ているような感覚を覚えました。学生が働けるような施設が少なかったこともあって、アルバイトで勤めた先も農家でした。農業がいつも身近にある北海道の自然の中で、学生時代を過ごし、勉強させてもらいました。そんな環境の中で、新潟の農業やふるさとに誇りを持てる出来事がありました。大学の友人はコメを買って食べていましたが、私は新潟の実家で作ったコメを送ってもらっていたので、「ぜひ、新潟のコメを食べさせてほしい」と言われたことがあります。その友人に実際食べてもらったところ「うまい!」と言われ、その時に「自分はいいところに生まれ、贅沢な環境にいたなあ」と感じました。
 それでも、大学卒業後はさまざまな経験をしたいという思いから、一度は農業とは関係のない会社に就職しましたが、大学時代に考えていた「結婚をして子どもが生まれたら自分が親にしてもらったように、自分で作ったコメを食べさせてあげたい」という思いがだんだんと強くなりました。
 実家を離れて生活させてもらったおかげで、自分が生まれ育った環境が恵まれていたこと、「食べさせてほしい」と言われるほどのコメを作ることのできる地元の農業の素晴らしさに気づくことができました。今、農業を自らの職業として選んで生活していることは、大学時代の経験のほかに、育った環境が土台にあったことが大きいのかもしれません。

農業のあり方 父の時代・私の時代

 日々の仕事の中で、農業も変わっていかなければならないと感じるという大倉さん。大倉さんが考える、今の農業に必要なことについて伺いました。

 私は父と同じ農業の道を進んでいますが、時代の移り変わりに対応できるよう、工夫をしていかなければいけないと感じています。親の世代は、コメを作れば売れる時代で、周りはみんなライバルのような状況だったようです。しかし、今は違います。コメは日本人の主食としてなくてはならないものであるとは思いますが、消費者のニーズも変化しています。また、コメの単作をしていると、台風などの気象条件の影響を受けて厳しい状況になることもあります。そのため、野菜栽培を取り入れた複合経営にもチャレンジしていくなど、私たちの時代では、周囲の状況に合わせて、経営方針を考えていかなければならないと思っています。
 今の農業を見ると、これからどう生き残っていくかという状況で、横のつながりを強めて情報を交換することも大切だと思っています。就農した当初は、周りに農家の知り合いがおらず淡々と作業をこなすという感じでしたが、JAの青壮年部の集まりをきっかけに、豊浦地区の40歳以下の若手農業者のつながりができたことで、私自身の仕事にも良い効果が生まれています。地域での農業経営を考えた場合にも、機械の操作や効率的な作業の方法などを共有することで、全体の底上げができ、「大変な時にはお互いに手伝いに行く」というような横の連携を大切にすることで、新発田の農業の発展にもつながるのではないかと思います。

農業を継承していくために

写真:大倉さんと、新たに入社した塩田さん

 農業の後継者不足。それは新発田でも例外ではありません。大倉さんは新発田の農業を受け継ぎ、発展させていくためにどのようなことが大切であると考えているのでしょうか。 

 私が勤めている法人は現在4人で経営していて、うち2人は高齢になりつつあり、数年のうちに後継者を育てなければなりません。現在は、苗の栽培や田んぼの見回りなどを分業で行っているため、2人が引退する前に引き継ぐ必要があります。分業はさまざまな点で利点もありますが、その人がいなくなると立ち行かなくなるようでは困ります。私自身、就農して約10年たちますが、現場の作業のほかに書類作成などの事務仕事もあり、2人から受け継がなければならないことがたくさんあります。そうしたことから、今年の5月には法人の将来を考え、後継者の育成のため20歳の若者にも入社してもらいました。楽しみながら農業に取り組んでくれているようで、来春からは田植え機に乗って作業ができるよう、私が培ってきたノウハウを少しずつ伝えながら、後継者として育てていきたいと考えています。
 農業を継承していくには、新たな担い手を雇用するための法人経営の方向性についても考えなければなりません。人を雇うためには、勤務時間や休憩室の整備など雇用条件や職場環境を整えることも必要です。最近では農業に興味を持つ女性も増えており、細やかな目配りなどを農作物の販売促進に役立てられるのではないかと考えています。女性に限らず、新たに農業に携わりたい方といっしょに働けるよう、環境を整えることは法人の将来のみならず、地域農業の継承にもつながるのではないでしょうか。

就農を考えている方に伝えたいこと

写真:収穫作業の風景

 幼い頃に家族が農業をする姿を見たり、手伝いをしたりすることもあったという大倉さん。それでも、本格的に農業を始めるまでは分からなかった苦労もあったそうです。自らの経験を踏まえて、現在、就農を考えている方に伝えたいことを伺いました。

 農業は自然が相手なので天候などに左右されるうえに、地道できつい作業があって本当に根気のいる仕事です。当然のことながら、コメや野菜など、種類によって栽培方法や病気も違うので、たくさんの知識が必要で毎日が勉強です。農業機械などの設備面についても考えなければなりません。ですが、さまざまな課題はあるものの、そこに農業の面白さがあると思いますし、苦労が多い分、無事収穫できた時の安堵感や喜びは大きくなります。
 今後、就農を考えている方は、一から全部自分でやろうとせず、まずは、新発田市の制度を利用したり、関係機関が行っている講習や研修に参加したりすることをお勧めします。繰り返しになりますが、農業は決して楽な仕事ではありませんが、自分で育てた作物を「おいしい」と言ってもらった時は嬉しいですし、ましてやそれが自分の子どもであればなおさらです。また、やり方を工夫することで、収入や休みも自分次第で調整できるという面もあり、やりがいを持てる夢のある仕事です。農業を通じて、地域の人とのつながりができ、仲間もできます。新発田で農業をしたいという方は、ぜひ、一歩踏み出してみてほしいです。

 地域全体の農業の活性化を真剣に考える一方で、仲間と楽しみながら日々の仕事に取り組んでいる大倉さん。これからも新発田の農業を盛り立てていってほしいですね。

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