滝谷新田・滝谷集落 新井雅俊さん
定住を決めたからこそ、協力隊を早く退任したかった
故郷・新潟に戻ってくるという選択
新井さんは新潟市出身ですよね?
―はい。新潟市東区の出身です。大学進学をきっかけに上京して、そのまま向こうで就職しました。
どのような仕事をしていましたか?
―医療機器の会社で開発を行っていました。血が止まりにくくなる血友病という病気があるんですが、その診断に使うキットとか。
専門的なお仕事ですね。
―そうですね。でも、ずっと会社にこもっている訳ではなくて、全国の病院へ出向く機会も度々あって。当時はそれがいい気分転換になっていました。
協力隊に応募したのはなぜですか?
―都会のくらしに疲れたっていうのが一番の理由です。あと、「いつかは新潟に帰るんだろうな」ってぼんやり考えていたんですよ。いわゆるUターンです。
新潟に戻ってくるにあたり、協力隊以外の選択肢もありましたか?
―普通に就職することも考えましたよ。でも、協力隊の存在を知ったらどんどん魅力的に思えてきて。6月くらいに新発田と長岡へ見学に行って、最終的には今の所に決めました。協力隊員になったのは、その年の10月です。
新発田に決めたのはなぜですか?
―実家に近いっていうのもひとつの理由ですが、下越は昔からなじみがあったんです。父方の祖父が瀬波温泉で旅館を経営していたので、子どもの頃は毎年村上に行ってましたし。まったく知らない土地より、少しでも知ってる場所の方がいいかなって。
移住をきっかけにして生まれた地域の変化
地域おこし協力隊のくらしはいかがでしたか?
―滝谷新田地区から赤谷地区の診療所への送り迎えや田んぼの手伝いなど、自分ができることをやっていました。横浜にいた時と比べて、時間がゆっくり流れているなというのは常に感じてましたね。
時間がゆっくりですか?
―はい。たとえば、毎週火曜日は公民館に常駐していたんですが、その時に地域の人とお茶を囲む機会が多かったんです。協力隊としては地域の人と距離を縮める場でもあるし、情報交換の場にもなるから立派な仕事なんですけど、サラリーマン時代では考えられないですし(笑)
確かにそうですね。
―2年目からは猫ちぐら作りを始めたこともあって、長い冬も苦じゃなくなりました。集中して作業してると、あっという間に時間が過ぎていくんですよ。
猫ちぐらはどうして作り始めたんですか?
―米作りをするとわらが余るので、何か有効活用できないかと思ったんです。本で作り方を覚えて、色々な所で披露しましたよ。市のイベントで作り方を教えたり、JOINの移住・交流フェアでは完成品を持って行ったり。
簡単に作れるんですか?
―コツさえ覚えれば意外と簡単ですよ。でも、猫が入れるサイズを作るのはものすごく時間がかかります。装飾用のミニサイズなら3~4時間程度で作れますけど。
今でも作ってるんですか?
―いえ(笑) 赤谷の「趣味の会」で教えたことがきっかけで、川邊さん(元協力隊)は時々作ってるみたいですね。
地域おこし協力隊の活動で、印象に残っているできごとはありますか?
―毎週水曜日に公民館で開催していた「ときめき週1体操」ですね。私がこの地域に移住してくる前って、地域の人が公民館に集まる機会がほとんどなかったらしいんですよ。でも、体操をきっかけに集まる場ができて、私が退任したあとも続いてる。今は一緒に参加できないですけど、地域に根付いてくれたことがうれしいです。
任期を待たずに就職、定住した訳
定住を意識し始めたのはいつですか?
―2年目が終わる頃ですかね。この家に住み続けたいなって思っていたので、自宅から通える範囲で仕事探しを始めました。
起業という選択肢はなかったですか?
―じつは、新発田に来る前に一度経験してるんですよ。医療機器の会社を辞めて、しばらくはインターネットを使った通信販売のビジネスをしていました。でも、自分には合わなかったんです。
どうしてですか?
―お金に執着がないというか、一人だとだらけてしまうんです(笑)
それで就職を。
―はい。縁あって、就職活動を始めてすぐに胎内市の企業から内定をいただきました。入社するまで少し待っていただいたこともあり、結果的に2年6カ月で協力隊員を退任しました。
今の家に住み続けたいと思った決め手はありましたか?
―バランスを取るにはちょうどいいんですよ。
バランスというと?
―就職するとなると、ある程度の時間的な拘束が発生して、少なからずストレスも生まれるだろうなって。その反面、今の家だと畑をいじったり薪を割ったり、そういった時間が持てる。オンとオフのバランスが上手に取れるかなと。
なるほど。
―薪ストーブの存在も大きかったですね。ホームセンターで買ってきて自分で設置したんですけど、ぼーっと炎を眺めてるだけでも癒されるんです。酒の肴を焙るのにも使えますし(笑) アパートだったら絶対無理でしょ?
贅沢な時間ですね。
―雪は多いしカメムシもたくさん出ますけど、住むならここかなって(笑)
わかる気がします。
―じつは、協力隊は早く退任した方がいいのかなって思ってたんです。
どうしてですか?
―自分が「お客さん」だったからです。
新井さんが?
―はい。地域の人からしてみれば、「協力隊の任期が終わったらいなくなる人」っていう認識が少なからずあったと思うんです。退任後も滝谷新田に住み続けるとは誰も考えてなかったんじゃないですかね?
新井さんはそう感じていた?
―ええ。だから、ここに住み続けたいっていう気持ちが強まるごとに、その誤解を早く解きたいなって。それが任期を待たずに職探しを始めた理由にもなってくるんですけどね。
地域住民としての新たなスタート
今のお仕事はいかがですか?
―順調ですよ。自宅から40分ほどで通えますし、残業もないので助かってます。
バランスが取れている?
―そうですね(笑) 週末はほんとにゆっくり過ごしてます。ここに住み続けてよかったなと思える瞬間です。
退任後、地域の人との関係は変わりましたか?
―平日は勤めに出ているので、どうしても接する機会は少なくなってしまいました。でも、地域の消防団に加入したので、月1回の点検の時には必ず会ってますね。
消防団は退任後に加入された?
―はい。退任のあいさつ回りをしている時にお願いされました。「これからも住み続けてくれるなら、ぜひ入ってほしい」って。これでようやく地域住民に仲間入りできたというか、認められたのかなって思いましたね。
うれしかった?
―ええ。人数も少ないし平和な集落なので、いつ実際に出動するのかわかりませんけど(笑)
最後に新発田市の協力隊に興味がある人に一言お願いします。
―Uターンするにはとてもいい制度だなと思いますね。3年間という任期の中で、もう一度自分を見つめなおすことができるんです。私の場合は、やっぱりもう一度サラリーマンになるのがいいのかなって決意できましたし。あと、定年後を考えると田舎に住んだほうが絶対おすすめですよ。家の庭で薪割りや畑いじりができるなんて、最高だと思いませんか?
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